診察・研究活動Consultation and Research Activities

覚醒下手術について

脳腫瘍における手術の目的は、(1)病理組織診断を行うこと、(2)できるだけ腫瘍細胞を取り除き機能予後・生命予後を改善させること、(3)頭蓋内圧をコントロールすることです。

胃がんや大腸がんなどは、機能や血液・リンパの走行から、定型的な手術が行われますが、脳腫瘍の場合は切除範囲を広げるほど神経機能を損ねてしまう問題があり、一例一例で切除範囲の詳細な検討が必要です。

脳腫瘍が機能野に近いとき、なかでも優位半球の前頭葉や側頭葉にある言語野に近いときに、最大限の腫瘍摘出と機能温存を両立する目的で覚醒下手術を計画することがあります。これは、術中に麻酔を覚まし、脳表を直接電気刺激することにより起こる変化をみることで、神経機能を確認し、局在をマッピングし、腫瘍摘出の際にこの領域に配慮することで神経機能を温存することを可能にします。

特に言語機能の温存を目的とした腫瘍摘出術時に有用な手段となります。逆に、覚醒下手術の必要のない症例は、腫瘍が機能野から離れて存在する症例やすでに温存すべき機能が損なわれている症例などです。

(文責:吉田 光一)

開頭後、覚醒させ気管内チューブを抜去したところです。課題に答えてもらいながら神経機能を確認していきます。痛みはありません。
左側頭葉の皮質をバイポーラ刺激して、課題中の神経機能の変化を確認しているところ。