診察・研究活動Consultation and Research Activities
定位的放射線治療
定位的放射線治療は、放射線治療のひとつの方法です。通常の放射線照射よりも高い精度で位置決めを行い、正常の脳組織がなるべく照射されないように、放射線を病変の形状に一致させて集中照射する放射線治療です。
細い放射線のビームをあたかもメスのように操作して病変だけを正確に照射する様子が、手術の際の鮮やかなメスの切れ味にたとえられ、単回照射を『放射線による外科手術』という意味から『ラジオサージャリー』とも呼ばれています。病変に対して一回から数回で多くの放射線を照射することができるので、優れた治療効果が期待できます。
長崎大学では、最新の高精度放射線治療装置を使ってこの治療をおこなっています。
頭蓋内・頭頸部治療対象疾患
- 転移性脳腫瘍
- 髄膜腫
- 脳動静脈奇形(AVM)
- 聴神経腫瘍
- 下垂体腺腫
- 頭頸部腫瘍
病変の大きさとしては直径3cm以内のものが適しています。手術では治療しにくい部位の病変や、合併症のため手術が難しい方、高齢の方への治療も可能となります。
実際に治療が可能かどうかは、脳神経外科と放射線科のスタッフで十分に検討し判断します。
定位的放射線治療による治療例
@@@治療のスケジュール
患者さんの状態や疾患により多少の違いはありますが、一回の照射の場合には3日間の入院で、治療は一日で終了します。病気の種類や大きさ、発生場所により複数回の照射が必要になることがありますが、治療そのものが患者さんに与える負担は小さいので、通常は照射期間に数日を加えた入院で十分です。
一回照射の治療の際、正確な放射線照射のため頭部にヘッドリングを固定するときに軽い痛みを感じるかもしれませんが、十分な局所麻酔をおこないますので心配ありません。それ以外に痛みを感じるような処置はおこないません。治療後の経過
治療の効果は、すぐにあらわれるものではありません。退院後は、当院外来か紹介された病院で、定期的な診察と検査(CT・MR・血管造影)によって治療効果をみていきます。疾患によって必要な検査や検査の時期が異なりますので、退院時に担当医が説明します。
副作用としては、治療当日から数日後には、頭痛・悪心・嘔吐・発熱などが起こることがあります。しかし、この時期の副作用は一時的なもので、まず重篤なものはありません。
治療数週から数ヵ月後にも、まれに副作用が起こることがあります。この時期の副作用の症状や程度は、治療を受けた病変の部位や大きさ、放射線の量によってさまざまです。このような副作用の出現をチェックするためにも、治療後の定期的な診察と検査が必要です。(文責:鎌田 健作)